法科院生弥生殿見聞録

だいたい愚痴しか書いてない。

名もなき者の回想録───いかにして彼は「終止符を打った」のか───

 私は「J」である。かつて私には「F」という推しがいた。しかし、その「推し活」は長くは続かなかった。

 

───これは「J」がいかにして「他界」をしたか。「J」は推しを選ぶことに際して、いわば「規範」とするべき「哲学」について彼の追憶を通して叙述されたものである。いわば「名もなき者の回想録」の派生のようなもの、続編というべきか番外編というべきか。それは兎も角、同じ時間軸のうち別の回想録である。発端である「J」と「F」のいきさつについては弊ブログ「名もなき者の回想録」にて───

 

kyogoku-0320.hatenablog.jp

 

 私にはかつて「F」という推しがいた。彼女は身長が高いうえパフォーマンス面においても申し分なかった。彼女はアイドルとして理想であった。性格面で言うとあまり積極的な、いわば「陽キャ」タイプではなかったが、私自身陽キャなどとは程遠く、むしろ話しぶりは自分と合うようであった。自分と合うのであれば、寧ろ「陰キャ」ではないか・・・などと失礼なことはよしておこう。ただ直感で話してみて違和感がなく、話しやすかった。その直感は間違ってはいなかった。しかし、私は・・・いわば「推し変」、いやそもそもそのコがいたグループからさえも離れた。いやそれでよいか。「グループ内推し変」は大罪なるや。

 

 今思えば・・・必然でありながら。それから私は目を背けていたのであったのではないか。いや背けていた。

 もとより私が「F」を推そうと思ったきっかけは「F」が所属していたグループを気に入ったからだった。「RW」というグループだった。「RW」を見つけた当時、私は推しも主現場もなく、ここに新しく行こうと思った。気に入ったのは、決め手となったのは世界観とコンセプト、曲であった。では推しメンは誰にしようか?

 どう決めるか、直感で、ステージを見て決めよう。・・・いや実は少し違った。もちろんこれは理由の一つではある。たださらに加えれば、正直にいうと「見た目が好みだった」からと「ステージからはける時に手を振られた(ような気がした)」からというものだった。我ながらあまりに理由が雑だ。

 ただこの選択は間違いではなかった。しかし長くは続かなかった。

 「RW」は最終的になくなってしまったからだ。私がここに行き始めてから1年ちょっとのことだった。

 上述したとおり、私は「RW」の価値を「世界観(コンセプト)と曲」に見出した。この時私は「推し」にまでは関心がなかった。「推し」は現場に行って、実際に見て決めればよい、そのくらいにしか考えていなかった。これは何を意味するのだろうか?

 それは・・・「推しを決める前提がグループそのものが好きであること」である。まずグループが好きであることを先行してその前提として、後ほど「推し」がいるのだ。すなわち「グループ自体(厳密には当該のコンセプトや曲など)が好きであること」これは前提条件なのだ。附随して言うと、「グループは好きだが、推しは特にいない」という状況は成り立つ。では、この「前提条件」が崩壊すると如何に?

 「推し」は「推し」でなくなるのだ!私にとって「推し」は所詮グループありきだったのだ。「グループが好きだから推しがいてかつ好きである」、という一方通行でしか過ぎなかったのだ。

 「RW」は終わる。それは「RW」が終わることによって、「RW」が好きであるから「F」も好きだった、という相関関係が私の中で崩壊した。

 畢竟、私が「F」を好きだったのは、紛れもなく「RW」が好きであったことに下支えがあったことに他ならなかったのだ。ただそれを・・・彼女を推しているうちに忘れていた。いやそのことから背けていた。ただあの時は信じていた。「まだ」続くはずだろうと。

 実のところ「RW」が終わったものの「F」の活動は継続していた。もちろん推し続けることも「可能」ではあった。実際のところ、私は機会があった以上行き続けた。「本質」から目を背けながら。しかし「本心」からは最終的に逃れられなかった。「本質」から目を背けることはできなかったのだ・・・。

 こうして私はようやく「推し」が何たるかを知った。今思えばユニットありき程度でしか好きでなかったのかと。もっともユニットありきの「推し」でしかなかったのか、あるいは、そもそもユニットありき程度にしか私は好きになれなかったのか。その答えは見つからなかった。

 所詮私は「現場が好き」の限りでしか「推し」を好きになれないのだろう。それはこの先数々の現場に行くだろうが変わることはないのだろう。ただ一人、「現場は好きでもないのにたまに話に行く」アイドルがいる。彼女は何者なのだろうか。「現場が好きな限度で推しがいる」のに対して「現場は好きでないにもかかわらず、私が会いに行く」アイドルとは。「彼女」はある種の「特異点」なのだろうか。推しではない、「なにか」なのか。