法科院生弥生殿見聞録

だいたい愚痴しか書いてない。

名もなき者の回想録

 これは名もなきオタク、いや名がないのは不便であろう。この者を「J」と称し、一人称として「私」として述べる。「J」による追憶を通して「あること」について述べる。これより語られる「J」の回想録はフィクション、はたまたノンフィクションか、わからない。

 文中「─(罫線)」を文頭と文末に用いて記述することがある。これは筆者がいわば「神の視点」として注釈乃至(※注1)注記を附するものとする。

※注1:乃至(ないし)と読む。①~又は、②~から~まで、という二つの意味を有するが、①と②のどちらで用いられているか文章の流れ、内容等からいずれの意味で用いているか読み取らねばならず、不明瞭になるため、使用はあまり推奨されない。本ブログでは、~または、のニュアンスで一貫して用いる。

 

20xx年夏

 

 私は「J」である。N市に住んでいた。アイドルオタクをしていたが、主現場はとっくに失ってしまった。何かないだろうか・・・。そう思っていた折に某動画サイトで「あるグループ」を見つけた、見てみよう。なるほど変わったコンセプトである。しかし世界観は一貫している。一度現場に足を運んでみよう。しかし遠征せねばならぬのか。いやしかし遠征してでも行く価値があるものかもしれぬ。見るほかない。

 

─────このグループは「RW」と以下表記する。「K」が住んでいた地域のグループではなく、「遠征」を要求するグループであったが、後に気に入り一年ちょっとの期間を高速バスで往復してでも主現場として通うことになる現場となる─────

 

 私はこのグループの現場を1年4か月ほどの期間、通い続けた。ダンス、歌、曲調、衣装、世界観は一貫しており、コンセプトが珍しかったため、物珍しさ、希少さも含めて気に入ったのであった。さらには身長が高く、舞台映えもするかわいいメンバーが居て、チェキを撮り、話してみたところ、性格的にも何か合うような気がしてそのコを「推し」とした。結論から言うとこの選択は正しかった。しかし、長くは続かなかったのであった。以下当該推しを「F」とする。

 

通い始めた翌年の20xx年冬

 

F「いつも来てくれてありがと~」

私「そんなことないよ、遠征民だから多くは行けてないし。まぁ定期的には行けてるけどねw」

F「遠征して、私にわざわざ会いに来てくれるの嬉しいんだよ。」

私「嬉しいこと言ってくれるなぁ、ありがとう。」

─────彼女はささやくように、声音を落として言う─────

F「実はね。このグループには''爆弾''があるんだ。」

私「爆弾?良いことではない?」

F「うん。。。」

私「君のこと?」

F「私のことではないんだけど。」

私「・・・そうか。いや貴女のことでないなら・・・。いいよ。」

 

 爆弾?なんだろうか。ただ口ぶりはどう考えてもいつもチェキ行く時の雰囲気ではないし、随分深刻に思われた。いや、「F」に関係ないなら、、、とりあえず良しとするか。これ以上問うわけにもいくまい。

 

─────この「爆弾」はかなりのものであった。結論として、後に、「RW」が「解散」(※注2)するにあたって間接的なトリガー(私見)となる。ただ、「F」に関係することではなかったのは真実である─────

※注2:解散という文言に「」を附しているのは、「RW」が解体されるにあたっては、「活動終了」と発表がなされ、「解散」とは明言されなかったのである。後の流れからも「確かに」解散ではない側面はあるが、実質的には「J」は解散以外の何物でもないと考えており、「解散」の文言を用いた。経緯については、後に「J」の追憶を通して述べる。

 

 「RW」は「東方炎館」という会場でワンマンライブをすることになっていた。当該会場は700~800ほどの会場で地下アイドルが目標とするハコの一つであった。そのワンマンライブをこの冬から数か月後の夏に控えていた。

 

 冬から数か月経過し、ワンマンライブ当日を迎えた。メンバーもオタクも待ちに待っていた日である。三章から構成される公演で、他のアイドルグループから一名を呼び、もう一名「RW」のメンバーとコラボする章(ワンマンライブとしては似つかわしくないが・・・)、今までの使用してきた衣装に着替えつつダンスをメインとする章、純粋なライブをする章から構成された。・・・そういえば爆弾とは何だったのだろう?

 

 私は当該公演を楽しんだ。楽しかった。憧れとするようなハコに自分の主現場が辿り着いたのだ。それを見届けることができたのは幸甚に思った。「F」も楽しんでいたようである。私は満足感を覚えつつ、夜行バスで帰路に着いた。

 

 数日後、あるメンバー(以下「C」とする)が「契約解除」とされる旨の告知があった。えっ。そんなことが。顛末としては以下の述べる。

 「C」は自分のファン(以下「甲」とする)甲と「私的」に「交流」を図っており、また金銭トラブルを生じさせていたとのことである。「C」は私が現場に通う前の20xx年より甲と交流があったとのことで、当時は「気の迷い」として運営は不問に処したようであった(一度目の愚行)。そして、上記「ワンマンライブ」開催の20xx年夏の数か月前より、「C」は「甲」と「私的交流」を再開しており(二度目の愚行)、「再開した事実」は当該ワンマンライブの数週間前に確証を得るに至った。数週間前というほぼ直前で演出を変えるわけにもいかない旨の説明がなされ、ワンマンライブ終了後に「C」を契約解除としたとのことである。

 そうか・・・。いやワロタ。自分が通ってる現場でつながり不祥事出るの面白すぎwああwww爆弾ってこのことだったんすねぇwwwそら爆弾ですなww

 まぁとりあえず、しばらくしたらもう一度行くか・・・。ちょっといろいろ忙しいんよね。

 

─────当時、「J」は将来のキャリア設計のためにある試験を受けていた。もっとも、それと現場はある程度両立するものであったし、試験日は奇遇にも遠征先の地域が試験会場で試験の序に現場に行くことができた─────

 

 試験終わりに現場行ったろ!w・・・あれ?オタク少なすぎるだろ・・・。指で数え切れる(2進法で数えるわけではない、注3)ほどしかいませんね・・・。

※注3:「2進法で数えるわけではない」とは換言すると二進法の考え方を使えば、両手で「1023」までの数字を数えることができる(「二進法 指」での検索結果参照)ことを意味する。ただ通常「指で数えられる」数字は10までである。

 

 いやでもそういう日もある。たまたま少ない日も今までにはあったんだし。たまたまそういう日だったんだ。

 

 ─────数日後─────

 

 今日はどうかな・・・w。えwやっぱり全然いないですねぇww前よりはマシではあるけど。ギリギリ2桁はオタクいるねww・・・やっぱりあの不祥事がダメだったんだね。自分の推しじゃないから気にしてなかったけど。普通は心象悪いよね。あんな扱いをするのはね。いくら理由があった、やむをえなかったのかもしれないけど・・・実質的には不祥事を隠し続けてたのだから。

 こんな有り様で続けられるのだろうか?ただただそれが気がかりだった。どこか、メンバーと現場のオタクに「疲れ」があるようにも思われた。

 

 ─────ある日─────

 

 「RW活動終了」のお知らせが目に飛び込んできた。やはり無理だったらしい。それはそのはずであろう。行くたびに減っていると言っても過言ではない有り様だったのだから。人が戻る様子もなく、改善する余地も見えなかった。まぁある意味報いという不幸というか、ともかく致し方なかった。私たちにできることはないのだから。 

 

 幸いと言ってもいいのかわからないが、「活動終了」発表以後はそれなりの人が来ていた。これを維持できていればよかったのだが・・・。まぁ・・・ほぼ最後だから、というところであろう。

 

 そして当該発表から1か月後、活動終了ライブが開催された。それなりの人が来ており、有終の美を飾るには悪くはなかったように思われた。もっとも間接的に不祥事で終止符を付けたのだから、いいも悪いもない。

 

 「活動終了」以後、「F」は期間限定?の謎の活動をし始めた。もちろん私は行った。推しに会えるのだ。行かない理由はない。しかし・・・それ同時に違和感を覚え始めてきた。いくつかあるのだが・・・。

 ・いつまでこの活動を続ける気なのか?

 以後の活動は、地下どころかおおよそ地底と言って差し支えないようなメンツでライブ自体はつまらない以外のナニモノでもなかった。推しに会えるならと我慢していたが私にも限界はある。

 ・「次」がどのようなコンセプトになるのか?

 もとより現場に行くようになったのはグループのコンセプトと世界観に気に入ったのがきっかけであった。「次」も同じように自分が受け入れられるものかどうか、という保証はどこにもないことにようやく気付いた。

 

 結局私は自分が許す限りにおいて、「謎の活動」の間も一応は行っていた。それでもほんの数回であったが・・・。

 

 最終的にこの「謎の活動」期間を終えると、「F」は新しい、正規のグループとしての活動を再開した。しかし喜んだのは束の間だった。私の好きなコンセプトじゃない。なんだこれは。

 結局私はとうとう「F」のところに行かなくなった。いや厳密に言うと、懲りずに数回は行った。しかし、グループを好きになることなかったし、もはや「F」に対する思いも何もかも消滅していることを偏に自覚するのみであった。

 

 これでいいんだ。新しいコンセプトになろうと、来るオタクはいるんだ。なんなら新しいコンセプトを好む人さえもいるのだ。・・・それらから私は落伍するだけの話なんだ。

 新しいグループは「.RV」という名前らしい。客層も以前とは幾分か変わっているようだ。もちろん前のグループで見かけていた人も居るようだ。

 

 「.RV」は成功してほしい。かつて好きになった「F」には頑張ってほしい。しかし、「.RV」はまた同じ「過ち」を繰り返しはしないだろうか?同じ不祥事をいつの日か起こしやしないだろうか?その不信感だけは拭えない。・・・どうせ自分の好きなコンセプトじゃないんだ。・・・「終わらせる」には今しかない。

 

─────こうして「J」は「F」のところへ行かなくなった。およそ1年4か月の思い出に終止符を打ったのである。「ただ」、「J」はあっさり割り切ることができたようであった。自分自身の自由意思に基づくものであった。誰のせいでもない(しいて言うならつながって消えたバカ一名くらいであろう)─────

 

            「J」の行方は、誰も知らない。

 

                               ~fin~